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ストーリー

椎葉村 大昔から今も続く循環型農法「焼畑」

民宿「焼畑」 椎葉 勝さん

 椎葉村で行われている焼畑(やきはた)は、今回、認定された農林業の1つです。
日本の伝統的な焼畑は、東南アジアの山間地等で行われている焼畑農業と比較して、1回の火入れ面積が比較的小規模に限った土地の火入れをパッチ状に行うこと、3〜4年間の栽培期間で輪作体系を設けること、長い休耕期間を必ず置き、森林を回復させることが大きな特徴です。
火入れをパッチ状に行うことで、野生動植物への影響も小さく、豊かな森林が維持されます。

 このような、森林と農林業の調和が図られた農法が現在も維持されていることが、世界的に重要なモデルとして評価され、世界農業遺産に認定されました。
 日本の焼畑は、縄文時代の粗放的農業に端を発すると言われ、昭和25年頃までは日本各地で行われてきましたが、焼畑から米作への農業形態の転換や、戦後の拡大造林計画によるスギ・ヒノキ林への転換など、社会情勢の変化に伴い急速に衰退し、現在継続して行われているのは全国でも椎葉村だけです。

今年も宮崎県椎葉村尾向地区、標高900メートル近くの山で、焼畑が行なわれました。
あらかじめ、木を伐採していた山の斜面。生い茂る草や竹を整備しておく「やぼ切り」を行ないました。
そして火入れとなった8月上旬、枯れた草竹を真ん中に集めることで、周辺に防火帯をつくります。

唱えごとから始まる火入れ

椎葉村で焼畑を毎年行なっている椎葉勝さん。防火帯が一通りできたあと、厳かに山の神にお神酒をあげ、火入れのために唱えごと(となえごと)を発しました。

「このヤボに火を入れ申す
ヘビ、ワクドウ(蛙)、虫けらども、早々に立ち退きたまえ
山の神様、火の神様、どうぞ火の余らぬよう
また、焼き残りのないよう、おんまもりやってたもうりもうせ」

一呼吸置きゆっくりと立ち上がった後、2つ手を叩き一礼。 いよいよ火入れです。

まず、ガスバーナーや竹などの先端を使って、斜面の上側の方から火を着けていきます。

循環型の農法で行うエコシステム

古来から伝わる農法である椎葉の焼畑。小規模な範囲で森林を伐採し、木材を搬出、下草を焼き払って耕地を形成します。
1年目は75日で種をまいて育つというソバ、2年目にヒエやアワ、3年目はアズキ、4年目はダイズを栽培します。
その後、約30年程度の休閑期間を設けて森林の力を回復させ、再び焼畑行なう循環的な農法です。 

熱風とともに上昇気流が巻き起こる

枯れた草が燃え盛り、火の粉と白煙があたりを覆い尽くします。

いつしか山を這う火の手が増し、猛烈な熱風が巻き起こります。
火は両脇から次第に中央に集まり、黒く焼き尽くしていきます。

鎮火後、そばの種を蒔く

火を入れて終盤にさしかかると、あたりに強い上昇気流が生まれます。
ところどころ小さな渦が炎と灰を巻き上げています。
最後は竜巻のように白煙をあげて、火は消えていきます。
しばらくして一面灰に覆われた斜面に、ソバの種を手早く蒔いていきます。

笹で地面をならして灰と種を混ぜていきます。
巻き上がった灰は、やがて降ってきた雨に打ち消されていきまました。

数年ぶりに火入れの後の雨、まさに理想的な火入れとなりました。

人間と自然が共存する循環

その椎葉村で焼畑を行っている椎葉勝さんに話を聞きました。
「今、焼畑を行っているのも、父親の代に焼いて以来の場所なんですよ。

 新しい焼畑の1・2年目は焼けた臭いを嫌って猪も虫もやって来ないので、完全無農薬で作物ができるんですよ。それが3年目、4年目になると、雑草が増え、それに伴い虫もやって来ます。山が強くなって、再生していくんですね。そうするとまた次の場所へと移動するんですよ。

 山を焼いて、その土地を利用し、その土地は元の山の姿へと戻っていく。そしたら違う場所を焼いて…。人間と自然が共存する循環がずっと続いているんです。」 

焼畑を介して森をつくる

 「焼畑は森の再生にもつながります。もともと50種くらいしかなかった植物が、焼いた跡には300種もの植物が生えてきます。専門家に話を聞いたところ、土の中に眠っていた種が目を覚ますらしいんですよ。そうやって、焼畑の跡は、元の山の姿に戻っていくんです。

 自然に生えてくる植物に加えて、クリや桜、カエデ、ミズナラなど、動物のえさになる植物を植えるようにしています。そうすることで、10 年20年経った焼畑の跡は木の実がたくさんなる森となり、木の実を食べにイノシシやシカなど動物が やって来るようになります。」

 その結果、シカやイノシシが本来の生息場所の山に戻ることで、餌を求めて人里にやってくることが少なくなるそう。

伝統農業を継承していくために

 「これからの課題は後継者づくりです。地元の小学校では30年くらい前から授業に焼畑の体験を取り入れているのですが、若い人たちが受け継がない限り、焼畑は途絶えてしまいますからね。」

世界農業遺産に認定されたことで注目が集まり活性化することが期待される椎葉村。
そして昔のように、村のあちらこちらから焼畑の煙が上る。
そんな風景が見られるようになればいいと話していただけました。