ストーリー

森を守り、森を活かす。

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 宮崎県の北部に位置する人口 1,500 人ほどの山村、諸塚村。標高 1,000m 級の急峻な山々に囲まれ、山林が 92%を占めるこの村では 1907 年に『林業立村』が宣言されて以来、林業を主体とした暮らしが営まれています。

 諸塚村の林業の特徴は、活発な林業と森林保全とが両立され、持続的な森林管理が行われていること。今でこそ SDGs(持続可能な開発目標)が叫ばれるようになりましたが、この村ではずっと昔から、持続可能な林業が続けられてきたのです。

森林の恵みが将来も続くように

 諸塚村には、椎茸栽培や畜産などの農業と林業とを合わせた『農林業複合経営』を行う“農林家”が多く存在しています。

 1957 年、村は林業に椎茸・畜産・お茶を加えた四項目を村の四大基幹作物に定め、これらの複合経営を推進します。この取り組みには林業家の経営安定に加え、もう一つ大きな目的がありました。その目的とは、森林の恵みが将来もずっと続くよう木材の生産に偏りすぎないようにすることだったのです。

 以来、持続的な森林管理が行われてきた諸塚の山々は『モザイク林』という独特な景観を呈するようになりました。このモザイク林は、適地適木を旨として、用材生産のための針葉樹林、シイタケ栽培のための落葉広葉樹林、天然林として保全される常緑の照葉樹林という三種の森林がパッチワーク状に配置されたもので、人々が森林を大切に維持しながら活用してきたことの表れなのです。

森と共生してきたことの表れである『モザイク林』

世界にも評価される森林管理

 バランスの取れた責任ある森林管理がされてきた諸塚の森林。そして、そこに暮らす人々の営みは世界的に高く評価されることになります。2004 年、村ぐるみで国際的な森林認証制度である『FSC®森林認証』(FSC®C012945)を取得したのです。

 この認証は、環境・地域社会・経済の三つの側面から、適切に管理された森林とその森林から生産される木材などの流通や加工の過程を評価し、認証する制度です。村ぐるみで FSC®森林認証を取得したのは諸塚村が日本で初めてのことでした。

「取得に向けてやったことといえば、これまでの取り組みを明文化したことぐらいなんです。それだけ諸塚の人々が森林に対する意識を持って暮らしてきたということであり、『FSC®森林認証』はその営みが世界的に評価されたことの証なんです」(諸塚村役場産業課 若本 裕貴さん)

若本さん(左)と中原さん(右)

"持続可能"へのヒント

 諸塚村が FSC®認証を取得しているのは森林だけではありません。加工・流通過程においても認証を取得しており、村で加工された木材は FSC®認証材(FSC®C022797)として多方面で採用されているのです。2020 年に完成した新しい国立競技場にも諸塚村の FSC®認証材が使われています。

「認証材になったからといって、以前より価格が上がったわけではありません。ただ、今後 SDGs が浸透し、今以上に認証材が選ばれるようになれば村産認証材の需要も高まり、林業家や加工に携わる人たちの収入につながります。そうな れば後継者不足の課題なども解消でき、今後も継続可能な林業経営ができるんです。
責任ある森林管理のもとで経営が行われている森林から生まれた FSC®認証製品を購入することは世界の森林保全につながります。ユーザーのみなさんにはぜひ FSC®認証製品を選んでいただきたいですね」(諸塚村役場産業課 中原 雅則さん)

半世紀以上も前から続けられてきた諸塚村の森林管理。そこには“持続可能” が求められるこの時代へのヒントが詰まっています。

村の特産品シイタケ。FSC®森林認証を受けた森林の原木で栽培されることから世界で初めての FSC®認証食品(FSC®C001800、FSC®C013329)となりました